1 - HostAliasesを使用してPodの/etc/hostsにエントリーを追加する
Podの/etc/hosts
ファイルにエントリーを追加すると、DNSやその他の選択肢を利用できない場合に、Podレベルでホスト名の名前解決を上書きできるようになります。このようなカスタムエントリーは、PodSpecのHostAliasesフィールドに追加できます。
HostAliasesを使用せずにファイルを修正することはおすすめできません。このファイルはkubeletが管理しており、Podの作成や再起動時に上書きされる可能性があるためです。
デフォルトのhostsファイルの内容
Nginx Podを実行すると、Pod IPが割り当てられます。
kubectl run nginx --image nginx
pod/nginx created
Pod IPを確認します。
kubectl get pods --output=wide
NAME READY STATUS RESTARTS AGE IP NODE
nginx 1/1 Running 0 13s 10.200.0.4 worker0
hostsファイルの内容は次のようになります。
kubectl exec nginx -- cat /etc/hosts
# Kubernetes-managed hosts file.
127.0.0.1 localhost
::1 localhost ip6-localhost ip6-loopback
fe00::0 ip6-localnet
fe00::0 ip6-mcastprefix
fe00::1 ip6-allnodes
fe00::2 ip6-allrouters
10.200.0.4 nginx
デフォルトでは、hosts
ファイルには、localhost
やPod自身のホスト名などのIPv4とIPv6のボイラープレートだけが含まれています。
追加エントリーをhostAliasesに追加する
デフォルトのボイラープレートに加えて、hosts
ファイルに追加エントリーを追加できます。たとえば、foo.local
とbar.local
を127.0.0.1
に、foo.remote
とbar.remote
を10.1.2.3
にそれぞれ解決するためには、PodのHostAliasesを.spec.hostAliases
以下に設定します。
apiVersion: v1
kind: Pod
metadata:
name: hostaliases-pod
spec:
restartPolicy: Never
hostAliases:
- ip: "127.0.0.1"
hostnames:
- "foo.local"
- "bar.local"
- ip: "10.1.2.3"
hostnames:
- "foo.remote"
- "bar.remote"
containers:
- name: cat-hosts
image: busybox
command:
- cat
args:
- "/etc/hosts"
この設定を使用したPodを開始するには、次のコマンドを実行します。
kubectl apply -f https://k8s.io/examples/service/networking/hostaliases-pod.yaml
pod/hostaliases-pod created
Podの詳細情報を表示して、IPv4アドレスと状態を確認します。
kubectl get pod --output=wide
NAME READY STATUS RESTARTS AGE IP NODE
hostaliases-pod 0/1 Completed 0 6s 10.200.0.5 worker0
hosts
ファイルの内容は次のようになります。
kubectl logs hostaliases-pod
# Kubernetes-managed hosts file.
127.0.0.1 localhost
::1 localhost ip6-localhost ip6-loopback
fe00::0 ip6-localnet
fe00::0 ip6-mcastprefix
fe00::1 ip6-allnodes
fe00::2 ip6-allrouters
10.200.0.5 hostaliases-pod
# Entries added by HostAliases.
127.0.0.1 foo.local bar.local
10.1.2.3 foo.remote bar.remote
ファイルの最後に追加エントリーが指定されています。
kubeletがhostsファイルを管理するのはなぜですか?
kubeletがPodの各コンテナのhosts
ファイルを管理するのは、コンテナ起動後にDockerがファイルを編集するのを防ぐためです。
コンテナ内部でhostsファイルを手動で変更するのは控えてください。
hostsファイルを手動で変更すると、コンテナが終了したときに変更が失われてしまいます。
2 - IPv4/IPv6デュアルスタックの検証
このドキュメントでは、IPv4/IPv6デュアルスタックが有効化されたKubernetesクラスターを検証する方法について共有します。
始める前に
- プロバイダーがデュアルスタックのネットワークをサポートしていること (クラウドプロバイダーか、ルーティングできるIPv4/IPv6ネットワークインターフェイスを持つKubernetesノードが提供できること)
- (KubenetやCalicoなど)デュアルスタックをサポートするネットワークプラグイン
- デュアルスタックを有効化したクラスター
kubectl version
.アドレスの検証
ノードアドレスの検証
各デュアルスタックのノードは、1つのIPv4ブロックと1つのIPv6ブロックを割り当てる必要があります。IPv4/IPv6のPodアドレスの範囲が設定されていることを検証するには、次のコマンドを実行します。例の中のノード名は、自分のクラスターの有効なデュアルスタックのノードの名前に置換してください。この例では、ノードの名前はk8s-linuxpool1-34450317-0
になっています。
kubectl get nodes k8s-linuxpool1-34450317-0 -o go-template --template='{{range .spec.podCIDRs}}{{printf "%s\n" .}}{{end}}'
10.244.1.0/24
2001:db8::/64
IPv4ブロックとIPv6ブロックがそれぞれ1つずつ割り当てられているはずです。
ノードが検出されたIPv4とIPv6のインターフェイスを持っていることを検証します。ノード名は自分のクラスター内の有効なノード名に置換してください。この例では、ノード名はk8s-linuxpool1-34450317-0
になっています。
kubectl get nodes k8s-linuxpool1-34450317-0 -o go-template --template='{{range .status.addresses}}{{printf "%s: %s\n" .type .address}}{{end}}'
Hostname: k8s-linuxpool1-34450317-0
InternalIP: 10.0.0.5
InternalIP: 2001:db8:10::5
Podアドレスの検証
PodにIPv4とIPv6のアドレスが割り当てられていることを検証します。Podの名前は自分のクラスター内の有効なPodの名前と置換してください。この例では、Podの名前はpod01
になっています。
kubectl get pods pod01 -o go-template --template='{{range .status.podIPs}}{{printf "%s\n" .ip}}{{end}}'
10.244.1.4
2001:db8::4
Downward APIを使用して、status.podIPs
のfieldPath経由でPod IPを検証することもできます。次のスニペットは、Pod IPをMY_POD_IPS
という名前の環境変数経由でコンテナ内に公開する方法を示しています。
env:
- name: MY_POD_IPS
valueFrom:
fieldRef:
fieldPath: status.podIPs
次のコマンドを実行すると、MY_POD_IPS
環境変数の値をコンテナ内から表示できます。値はカンマ区切りのリストであり、PodのIPv4とIPv6のアドレスに対応しています。
kubectl exec -it pod01 -- set | grep MY_POD_IPS
MY_POD_IPS=10.244.1.4,2001:db8::4
PodのIPアドレスは、コンテナ内の/etc/hosts
にも書き込まれます。次のコマンドは、デュアルスタックのPod上で/etc/hosts
に対してcatコマンドを実行します。出力を見ると、Pod用のIPv4およびIPv6のIPアドレスの両方が確認できます。
kubectl exec -it pod01 -- cat /etc/hosts
# Kubernetes-managed hosts file.
127.0.0.1 localhost
::1 localhost ip6-localhost ip6-loopback
fe00::0 ip6-localnet
fe00::0 ip6-mcastprefix
fe00::1 ip6-allnodes
fe00::2 ip6-allrouters
10.244.1.4 pod01
2001:db8::4 pod01
Serviceの検証
.spec.isFamilyPolicy
を明示的に定義していない、以下のようなServiceを作成してみます。Kubernetesは最初に設定したservice-cluster-ip-range
の範囲からServiceにcluster IPを割り当てて、.spec.ipFamilyPolicy
をSingleStack
に設定します。
apiVersion: v1
kind: Service
metadata:
name: my-service
labels:
app: MyApp
spec:
selector:
app: MyApp
ports:
- protocol: TCP
port: 80
kubectl
を使ってServiceのYAMLを表示します。
kubectl get svc my-service -o yaml
Serviceの.spec.ipFamilyPolicy
はSingleStack
に設定され、.spec.clusterIP
にはkube-controller-manager上の--service-cluster-ip-range
フラグで最初に設定した範囲から1つのIPv4アドレスが設定されているのがわかります。
apiVersion: v1
kind: Service
metadata:
name: my-service
namespace: default
spec:
clusterIP: 10.0.217.164
clusterIPs:
- 10.0.217.164
ipFamilies:
- IPv4
ipFamilyPolicy: SingleStack
ports:
- port: 80
protocol: TCP
targetPort: 9376
selector:
app: MyApp
sessionAffinity: None
type: ClusterIP
status:
loadBalancer: {}
.spec.ipFamilies
内の配列の1番目の要素にIPv6
を明示的に指定した、次のようなServiceを作成してみます。Kubernetesはservice-cluster-ip-range
で設定したIPv6の範囲からcluster IPを割り当てて、.spec.ipFamilyPolicy
をSingleStack
に設定します。
apiVersion: v1
kind: Service
metadata:
name: my-service
labels:
app: MyApp
spec:
ipFamilies:
- IPv6
selector:
app: MyApp
ports:
- protocol: TCP
port: 80
kubectl
を使ってServiceのYAMLを表示します。
kubectl get svc my-service -o yaml
Serviceの.spec.ipFamilyPolicy
はSingleStack
に設定され、.spec.clusterIP
には、kube-controller-manager上の--service-cluster-ip-range
フラグで指定された最初の設定範囲から1つのIPv6アドレスが設定されているのがわかります。
apiVersion: v1
kind: Service
metadata:
labels:
app: MyApp
name: my-service
spec:
clusterIP: 2001:db8:fd00::5118
clusterIPs:
- 2001:db8:fd00::5118
ipFamilies:
- IPv6
ipFamilyPolicy: SingleStack
ports:
- port: 80
protocol: TCP
targetPort: 80
selector:
app: MyApp
sessionAffinity: None
type: ClusterIP
status:
loadBalancer: {}
.spec.ipFamiliePolicy
にPreferDualStack
を明示的に指定した、次のようなServiceを作成してみます。Kubernetesは(クラスターでデュアルスタックを有効化しているため)IPv4およびIPv6のアドレスの両方を割り当て、.spec.ClusterIPs
のリストから、.spec.ipFamilies
配列の最初の要素のアドレスファミリーに基づいた.spec.ClusterIP
を設定します。
apiVersion: v1
kind: Service
metadata:
name: my-service
labels:
app: MyApp
spec:
ipFamilyPolicy: PreferDualStack
selector:
app: MyApp
ports:
- protocol: TCP
port: 80
kubectl get svc
コマンドは、CLUSTER-IP
フィールドにプライマリーのIPだけしか表示しません。
kubectl get svc -l app=MyApp
NAME TYPE CLUSTER-IP EXTERNAL-IP PORT(S) AGE
my-service ClusterIP 10.0.216.242 <none> 80/TCP 5s
kubectl describe
を使用して、ServiceがIPv4およびIPv6アドレスのブロックからcluster IPを割り当てられていることを検証します。その後、ServiceにIPアドレスとポートを使用してアクセスできることを検証することもできます。
kubectl describe svc -l app=MyApp
Name: my-service
Namespace: default
Labels: app=MyApp
Annotations: <none>
Selector: app=MyApp
Type: ClusterIP
IP Family Policy: PreferDualStack
IP Families: IPv4,IPv6
IP: 10.0.216.242
10.0.216.242,2001:db8:fd00::af55
Port: <unset> 80/TCP
TargetPort: 9376/TCP
Endpoints: <none>
Session Affinity: None
Events: <none>
デュアルスタックのLoadBalancer Serviceを作成する
クラウドプロバイダーがIPv6を有効化した外部ロードバランサーのプロビジョニングをサポートする場合、.spec.ipFamilyPolicy
にPreferDualStack
を指定し、.spec.ipFamilies
の最初の要素をIPv6
にして、type
フィールドにLoadBalancer
を指定したServiceを作成できます。
apiVersion: v1
kind: Service
metadata:
name: my-service
labels:
app: MyApp
spec:
ipFamilyPolicy: PreferDualStack
ipFamilies:
- IPv6
type: LoadBalancer
selector:
app: MyApp
ports:
- protocol: TCP
port: 80
Serviceを確認します。
kubectl get svc -l app=MyApp
ServiceがIPv6アドレスブロックからCLUSTER-IP
のアドレスとEXTERNAL-IP
を割り当てられていることを検証します。その後、IPとポートを用いたServiceへのアクセスを検証することもできます。
NAME TYPE CLUSTER-IP EXTERNAL-IP PORT(S) AGE
my-service LoadBalancer 2001:db8:fd00::7ebc 2603:1030:805::5 80:30790/TCP 35s